それは、人生で初めて受けた人間ドックの後のことでした。検査自体はスムーズに終わり、渡された下剤を飲んで帰宅した私は、とにかく早くバリウムを体外に出さなければという一心で、指示通り水分を多く摂っていました。数時間後、便意を感じてトイレに駆け込み、無事に排出を終えて安堵の溜息をつきながらレバーを回しました。しかし、そこで目にしたのは、いつものように渦を巻いて消えていく水ではなく、恐ろしい速さでせり上がってくる汚水の姿でした。一瞬、心臓が止まるかと思いました。水は便器の縁ギリギリのところで辛うじて止まりましたが、そこには白く濁ったバリウムが不気味に沈殿していました。慌てて二度目のレバーを引こうとしましたが、直感的に「これはまずい」と思い、手を止めました。実は私の家は最新の節水型トイレで、流れる水の量が極端に少なかったのです。後から調べて分かったことですが、バリウムは石のように重く、節水トイレの弱い水流では、あの排水路の曲がり角を突破できなかったのです。私は冷や汗を流しながら、物置の奥から古いラバーカップを引っ張り出してきました。しかし、相手は紙の詰まりとはわけが違います。いくらスッポンを動かしても、手応えが非常に重く、まるで粘土を突いているような感覚でした。作業を続けること三十分、ようやく「ゴボゴボ」という音と共に水が引き始めましたが、便器の底には依然として白いこびりつきが残っていました。この経験から私が学んだのは、バリウムという物質の圧倒的な「重さ」と「粘着力」です。健康診断の案内には「水分を摂ってください」とは書いてありますが、「トイレを詰まらせないように注意してください」とは書いてありません。もしあの時、無理にレバーを連打していたら、間違いなく床一面が白濁した水で溢れ返っていたことでしょう。それ以来、私はバリウム検査の後は、まずトイレットペーパーを厚めに敷き、水流が最大になるように設定し、排出の途中で一度流すという「分割洗浄」を徹底しています。あの時の、水位が上がってくる恐怖と、孤独な格闘の記憶は、今でも健康診断の季節が来るたびに鮮明に蘇ります。
バリウム検査後にトイレを詰まらせた私の失敗談