住宅の漏水トラブルを解明する上で、その建物がいつ建てられ、どのような素材の配管が使われているかを知ることは、原因を特定するための極めて重要な手がかりとなります。日本の住宅史を振り返ると、配管素材は耐久性と施工性の向上を目指して進化してきましたが、それぞれの時代に特有の弱点が存在します。まず、昭和四十年代から五十年代にかけて建てられた高度経済成長期の住宅では、給水管に亜鉛メッキ鋼管、排水管に鉛管が使われていることが多くあります。これらの素材は錆に極めて弱く、内部で発生したサビ瘤が水の流れを阻害するだけでなく、サビが進行して管に穴が開くことが日常茶飯事です。この時代の物件で水道代が上がり、水の出が悪くなった場合は、ほぼ間違いなく配管全体の寿命と言えます。次に、昭和末期から平成初期にかけて主流となったのが銅管です。熱伝導率が良く加工しやすいことから給湯管に多用されましたが、水の流速や水質の変化によって管の内部が削り取られる「エロージョン・コロージョン」という現象が起き、ピンホールが発生しやすいという欠点が露呈しました。特に、配管が急激に曲がっている箇所でこのトラブルが集中します。さらに、平成中期以降になると、サビに強い樹脂管、特に架橋ポリエチレン管やポリブテン管が普及しました。これらはサビの心配がなく、継ぎ手が少ないため漏水リスクは劇的に低下しましたが、施工時のわずかな傷や、日光(紫外線)による劣化、あるいはネズミなどの小動物による食害という、金属管にはなかった新しい原因による漏水が報告されるようになりました。また、排水管においては、古くは鋳鉄管が使われていましたが、現在は塩化ビニル管が主流です。塩ビ管自体は非常に耐久性が高いものの、接着剤の塗布不足や、地震による建物の揺れで継ぎ手が外れるといった「人為的・環境的な要因」での漏水が目立ちます。このように、建築年代によって「漏水が起きやすい場所」と「その原因」には明確なパターンが存在します。リフォームを検討する際には、単に設備を新しくするだけでなく、壁の裏側に眠る配管がどの時代の素材であるかを確認し、必要であれば素材の特性に合わせた全面更新を行うことが、将来的な漏水リスクをゼロにする唯一の方法です。古い時代の素材に新しい時代の高い水圧をかけることの危険性を理解し、建物の「血管」である配管を次世代の素材へと繋ぎ変えていく視点が求められています。