トイレつまりが発生した瞬間、多くの人が反射的にやってしまうのが「もう一度レバーを回して流そうとする」ことです。しかし、これが最も危険な行為であり、一瞬で事態を修復不可能なレベルまで悪化させる原因になります。特につまった原因が、ポケットから落ちたスマホやペン、あるいは子供がいたずらで入れたおもちゃなどの「固形物」であった場合、追い打ちで水を流すことは致命傷となります。水圧によって異物が配管のさらに奥、床下のメインパイプとの合流地点まで押し込まれてしまうと、便器を取り外す大掛かりな工事が必要になり、修理費用は数千円から十数万円へと一瞬で跳ね上がります。もし異物を流してしまった、あるいはその可能性がある場合は、絶対に水を流さず、まずは止水栓を閉めてさらなる浸水を防ぐことが先決です。その上で、もし目に見える位置に異物があるのなら、使い捨てのゴム手袋をはめて直接手で取り出すのが最も確実で被害の少ない解決法です。ここでラバーカップ(スッポン)を使うのも避けるべきです。ラバーカップは「引き出す」力も持っていますが、同時に「押し出す」力も強いため、異物を配管の奥へと追いやってしまうリスクが高いからです。固形物によるつまりの場合、自力で解決できる限界は非常に低く、無理をすればするほど状況は悪化します。プロの視点から言わせていただければ、異物混入が確実な場合は、一分一秒でも早く専門の業者に連絡を入れることが、結果として「最短時間での解決」への近道となります。業者は高圧洗浄機やファイバースコープといった特殊な機材を使い、配管内の状況を正確に把握して、最小限のダメージで異物を回収します。一瞬の油断で起きてしまったトラブルを、一瞬の判断ミスで取り返しのつかない大惨事にしないためには、自分の手で行える限界を正しく見極める冷静さが求められます。水が溢れんばかりに溜まった便器の前で立ち尽くすのは辛いものですが、そこで手を止める勇気こそが、結果として住まいを守るための最善の策となるのです。
異物を流した際のトイレつまりを一瞬で悪化させないための心得